No Limits No Control

日常、想いをただ綴る

買収について

某企業で10年以上、広告宣伝の仕事をしていた。

もうすっかりおじさんの独り言。

 

企業買収なんてドラマや映画の中の出来事だと思っていた。

年末頃から知らない人が休日出勤のたびに会社へ何十人も来ていた。

今思えば第三者機関だろう。

あの頃はそんなの思いもしなかった。

 

この日記は、あくまでも自分の気持ちを単純に残したかったこと。

買収先からの言質と共にエビデンスとしてまとめ上げようと思ったのがきっかけ。自分で自分を守るために、企業買収の発表があった日から地道に日記を書いてきた。

 

無論、会話の録音やなんだこれ?って書類の確保もそう。

いつかブログなどでまとめて更新して、誰かの企業買収時の判断や心構えにでもなってもらえればと思っていた。

 

これがどの企業にも当てはまることではないだろうけど、往々にして企業買収で酷い目に遭う人が一定数いること。これは事例に過ぎないけど、誰かのために事前に知ってもらいたいと思ったからだ。そう、これはある日突然やってくる。

 

ここから先は、本当に自分が経験した内容をただ思うままに記している。

朝の通勤時と帰りの電車、家に帰宅したあとに思い出しながら書いたものなので、時間軸にズレがある箇所もあると思う。また、企業バレや人物像を特定できないように編集をしていること。数か月におよぶ内容となっているためかなりの長文。一気に読むと相当疲れると思う。何しろWordで20ページ以上になっていた原文。適当に。気になる人だけが読むといい。

 

・7月某日

朝、トイレへ行って戻って来ると周りから朝礼で会社が買収されたと聞いた。その後、部内ミーティングで朝礼の内容を部長より説明を受ける。会社の全株式の売却がされたこと、本日その調印があること、これまでの仕事の割り振りは現時点では未定とのこと。とは言え、ルーチンやそもそも決まっている仕事、やらなければならないことは多々あり、この日はいつものように仕事に追われる。夕方、前経営者より直接、長年依頼を受けていた案件の停止をいくつか命じられる。実は入社時から酒の席などで前経営者が会社をいつか会社を売却したいことは、よく口にしていた。この話も6月末頃にはなんとなく耳にしていた。ただ、実際にその日が来るまでいつもの噂レベルなのかもしれないと思う自分がいた。

 

・7月某日

午前中に買収先から部長以上の役職者が臨時で召集された。現状の会社の状態やこれからについて説明を受けたと、午後に部長からかなり簡略的な説明を受ける。年間売り上げが何十億もあるのに何故赤字なのか、こんな話があった模様。部長はそれ以上を語らなかった。売り上げの仕組みに一般論として齟齬が生まれた結果とのこと。また、年間不明な数億という金が前経営者に流れていたこと。この日は汚い話もたくさん耳にした。綺麗ごとだけで会社が回らないことは百も承知している。そして、企業買収された経験者からは自分たちがいつか切られるであろう話も耳にした。

 

・7月某日

現社長依頼の仕事をこなしつつ別案件をこなしていると、買収先よりリスティング広告停止を伝えられる。これは正直かなり堪えた。ブランドを活かすための広告を停止させられるのは本当堪えた。これも十年以上続けていたからこそ堪えた。やることはやっていたが、この日も正直ずっと流されるまま仕事をこなしていたので、あまり仕事外の記憶がない。

 

・7月某日

この日は休日出勤。特別やることはない。特別やりたいこともない。いつもの電話番。以前から出ろと言われていたので出た。買収先も大勢出勤していたのには驚いた。リストには多くの部署で出勤するメンバーの名前は記載されてはいるものの、会社には人がほとんどいなかった。

 

・7月某日

気温が40℃に迫る猛暑。突然動いた。某部署解体。自分の部署も買収先の新社長より聞き込みがあった。帰り際だったのに帰れなくなった。部長が解放されて声をかけたが、当たり障りのない聞き込みと言われた。言えないのか言いたくないのかわからないけど、さすがにこの日は心が折れそうになった。帰りの東海道線に映る自分は明らかに怒り顔だった。暑さのせいではなさそうだった。

 

・7月某日

夕方、買収先より全社員に向けて何かしらのアナウンスがあると連絡があった。この日まで詳細はお預けなのか…この日に身の振り方を知らされるのか、いずれにせよ曖昧なまま。何がイライラするかと言えば、切られるのか仕事を続けられるのか不明なままいろいろやらされていることにあると思う。いつも自分の保身しか考えていない場を引っ掻き回す空気の読めない部署の部長がいろいろ暗躍していたんだろうな、と思うとさらにイライラが募った。

 

・7月某日

久し振りに暑さが落ち着いていた朝。暑いけど、まだマシな朝。なるべく笑ってふざけあって過ごせれば…そんな風に思っている。イライラするのは不安もそうだけど不毛にしかならない。 朝一で部長より打診。これまでの業務分掌に即した紙焼きを急遽用意しろとのこと。これにどんな意味があるのだろう。もう既に決定事項があって、無駄な足掻きに思えてしまうのは心労のせいだろうか。この日も何かと追われる業務量。さっさと帰って早寝したい。

 

・7月某日

いつもの蒸し暑さはずいぶん解消されている朝。気温はこれから上がっていくのだろうか。夕方の買収先による説明会が気になって仕方ない。この日、曖昧さは払拭されるのかどうか。淡々と業務をこなしていると、気がつけば説明会の時間に近い。実際はアナウンスされていた時間より前に呼び出される。念のため録音した。内容は、いかに前経営者がやらかしていたかを説明される。会社の財政状況は明確に数字を見せられたけど、この不始末を自分たちにぶつけられてもなあ…って感じ。で、本社にいる職員の処遇は曖昧なまま。ただし、役職や給与面では見直しが入るとのこと。また、この建て前を今後どのように悪しき内容にしていくのか気になるところではある。悲観的に考えても仕方がないので、今日は行きつけの焼き鳥屋へ飲みに行く。少し頭を冷やさないとしんどくなるから。明日は誕生日。夏季休暇で会社を休むのは正直怖いのもあるけど、速報を上司に頼んでおいたので任せることにする。

 

・7月某日

誕生日を迎えた。長女からは飴ちゃん、次女からはミサンガをもらった。嬉しかった。午前中に免許の更新と次女の眼科へ行き、午後は少し疲れてうとうとしていた。嫌な予感がして、iPhoneのマナーモードを解除していると上司から電話が来た。何か仕事のイレギュラーかと思っていると、部長が買収先から呼び出しを受けてこんな話をされたとか。部署の解体やクビではなく、拠点を支援しろ。各拠点へ行ってやれることをしろ。広告宣伝の仕事は仕事でしろとか。いろいろ疑問はあるが、またもや明確なものではなく、ふわっとした追い込みをかけて来ている模様。いつから?とかいつまで?もない。各拠点へ行くのはいい、広告宣伝の業務のために会社へ戻るのもいい、しかし、だ。何をさせたいのか、何がしたいのかが、不透明過ぎる。いずれにせよ、重い贈り物を買収先の新社長よりいただいた、そんな誕生日になった。

 

・7月某日

朝からピリピリムードでみんな元気がない。こんな状態だから否めないだろうけど、こんな時だからこそ空元気でも笑っていたい。賞与が出た。よく出したなと思う。ないよりいい額面だったけど。夕方、今日は早く帰ろうと会社を出て喫煙所で一服していると、会報誌廃刊のお知らせが上長よりLINEで届く。急いで会社に戻る。長年の無理矢理発行だったからある意味良かった感がある反面、少し寂しさも募る。現社長も退職するとかしないとか、そんな話も耳にした。これどうすんの?笑うわ。笑うしかない。とりあえず自分たちの部署で酒の席を提案した。

 

・7月某日

月末になった。7月が終わる。何が起こるのか、何も変わらないのか。日中より夕方以降に何かが動くことが最近のパターン。今日は出社してすぐに朝礼参加のお達し。現社長が退職される旨、説明があった。これまで自分たちを守ってくれていた人がいなくなる。これが一番堪えた。その他にも営業で活躍していた長年の功労者も退職すると発表された。ボーナス後だけに、これからもっと退職者は増えると思う。また、ビルのフロア解約に伴いさまざまな移動や異動があるようだ。いずれにしても、クビはないにせよこれからも自分たちへの追い込みは激しさを増してくることだろう。そう思わせる朝の出来事だった。そうそう、ここにきてこれまでの広告宣伝費用や拠点オーナーへの支払いを滞らせるという荒業を買収先が提示してきた。広告宣伝費用に限らず備品購入や何もかもである。今日の今日で支払いを滞らせるというのはすごいと思った。夕方、退職に伴う挨拶に来られた方が数名居た。中には定年退職の方も居た。明日からもっと退職者が増えると思う。

 

・8月某日

電車はいつもの月初な混み具合。眠いのにスマホでニュースを漁り、これを書いている。朝一でこれまでのルーチンをこなし、昨日の営業会議でお題の上がったツールを作成…これが今日最大のテーマになるんだと思う。そうこう思っていると、前社長の置き土産ツール修正の校正、社長交代によるサイト修正、前経営者会社のサイト修正。矢継ぎ早に業務をこなしていたけど、そのくらいで特別何かが大きく変わるってことはなかった。買収先がいつからかわからないけど、まとまって会社に乗り込んでくるという話を耳にした。今や噂なのか本当のことなのか、真偽がよくわからないことが多すぎて迷走していて困る。ただ、悲観的な人が多い中、今日は割と自分が落ち着いているのが驚きではある。ダメならダメでいいくらいの気持ちは、決して投げやりではなくて潔さだと思っている。笑えないくらいしんどいのはわからなくはないけど、自分はその雰囲気に飲まれたくないのでなるべく笑って過ごしているのだ。それはそれでバカみたいに見られているんだろうか?それはそれで周りからどう見られようが…とも思ってもいる。この辺は自分のベース部分だろうから、気にしないのが一番だと思うことにする。

 

・8月某日

兼ねてから部長が前経営者に引き抜かれる話しは耳にしていたけど、噂レベルだと思っていた。今日になって自分の上長が業を煮やしたのか、直接本人へ聞きに行ったあと、緊急ミーティングになった。部長から直接話しを聞くことになった。来週、恐らく退職になるとのこと。自分の上長や同僚はイラついていたけど、自分は割とどうでもよかった。そんなもんだろうと思っていたのもあるけど、人様の人生そんなのいちいち構ってられないのが本音。行ってらっしゃい、せいぜいそんなもんだった。夕方、買収先のお偉いさんに上長が呼ばれて、話し込んだあとにこれまた緊急ミーティング。自分たちは拠点で働くことが濃厚となった。誰か一人を本社に残して拠点でのヘルプは既定路線らしい。ただし、広告宣伝としての仕事は失くす訳ではないらしい。ここのところはよくわからないけど、ここで議論しても拉致があかないので、あらためて買収先との話し合いの場を設けてもらい、不安や不満を解消するという着地点でミーティング終了。いずれにせよ、どこまでが本音かわからないけど、やれることやって給料が出ればいいくらいにしか思っていない自分は、相変わらずブレていないと思った。

 

・8月某日

うだるような暑さ。激動の昨日から一日が過ぎて、今日は比較的穏やかに時間が過ぎた。部長はずっと前経営者周りの仕事をしていて、席にほとんどいなかった。また、引き継ぎ的なことを部長と何度か話していたのだけれど、分かり合えない人だな…とつくづく痛感する。ひとつだけ嬉しかったのは、休日出勤を止めようと言うこと。無論買収先から出ろとの指示があれば話しは別だけど、それでも暦どおり休めるのは嬉しい。また、誰がどこの拠点へ行くかリストを人事が作成しているとも聞いた。部長が退職されるまであと一週間。この間に残された4人で上手くやっていかないと。出て行く者には心地よく「行ってらっしゃい」と声をかけてあげられるように。

 

・8月某日

湿気の多い陽射しのない蒸し暑い朝。朝から夕方までずっとデータのバックアップ。これが最後かと、割といろいろ理解できない様子の部長との絡みを楽しんでいた。途中、広告宣伝がほぼ某拠点へ移動する旨を聞いた。正直通える自信がない。何しろ遠すぎるのと、電車の乗り換え3回はしんど過ぎ。通勤が片道2時間30分。久々のショックではあったけど、潔さは自分らしさでもあるので、まあいいかで流す。やればいいだけ。何するのかわからないけど。

 

・8月某日

久々に気温が低い。雨が幸いにもうだるような暑さをさらってくれたのだろうか。じめっとはしているけれど、過ごしやすい気温ではある。これといって変化のない一日であった。ただ、広告宣伝の残された4人で飲む予定だったのが、上長のドタキャンにより同僚と部下の3人で飲むことになった。これはこれで楽しい時間が過ごせた。まだまだこのメンバーでやっていけると再確認することのできた、ある意味有意義な飲み会になったのは良かった。逆に、今後みんながどんな選択をしたとしても気持ちの良い別れができるであろう席だったことは幸いだと思う。

 

・8月某日

台風が近づいているためか、昨日に続いて涼しくて過ごしやすい。しかし、歩けばそれなりに汗をかくのはいつもどおり。今日は部長との引き継ぎがメインだった。いよいよ、大詰めなのか…という思いもあれば、気持ち的にそれでもあまりこれからも変わらなさそうだなあとも思った。今日は営業部長、総務部長など多くの部長職や取締役が退職。これからもバンバンいなくなるのだろう。この状況はこれからも続くのだろうけど、見守ろうと思う。

 

・8月某日

台風が過ぎ去って、わが家の雨漏りもいつもどおり。耐水テープ買ってきて補修しないと。久しぶりに湿気を含んだ、じめっとした暑さが帰ってくる。そろそろこの暑さは落ち着いてほしい。今日も今日とて平和。机周りの整理をしていたら一日が終わった感。この10年以上何故か捨てられないでいた資料のほとんどをデータ化して、シュレッダーで断捨離。これはこれですっきり。

 

・8月某日

朝からジリジリと暑い。しかし、世間はお盆休みなのかいつもより人が少ないように感じる。今日は一般的なお盆休み前週末。退職者が今後どのくらい増えるのかわからないけど、ひとつだけはっきりしているのは部長が今日で退職となること。

 

・8月某日

特筆すべきことがないほど、平和な一日だった。部長がいなくなったため席替えとソフトウェアライセンスの入れ替え、そんなもん。どうやって今日を乗り越えるか考えているうちに今日が終わった。

 

・8月某日

平和。ただし、知らん人が増えている。挨拶をしても返さないような人たちばかりなので、そんなに気にしてはいないのだけど、これも買収先の手なのだろうかと勘ぐってしまう。今日は急な修正があった。難しいことではないのだけど、やれることをやらないとだ。かねてからやろうとしていた倉庫整理も今日一部だけやった。明日も継続して倉庫はきれいにしたいところ。

 

・8月某日

朝から倉庫を整理していた。数日かかるだろうなあと思いながらやっていたけど、割とあっさり片付いた。ところがどうだろう、思いのほか疲れている。午後はまるまるやる気なし。

 

・8月某日

気が重いけど、平和そのもの。しかし、仲の良かった友だちが9月末で退職と聞いた。あと、衛生委員会でお世話になっていた方が退職されていた。次々と退職者が出てしまう。否めないけど寂しいものだ。

 

・8月某日

平和。正直そんなに立て込んでいないので、やることがないに近い。なくはないけどやる気が起きず、なんとなく午前中が終わる。ああそうだ、帰りにひとつだけ。今会社のあるビルから撤退(移転)確定と耳にした。相変わらずふわふわでいつかは不明。今現存している本社メンバーの総務と経理系だけは買収先のいるビルへ移動して、残りのメンバーは各拠点へ飛ばされるとか。いつから動いていつから新拠点なのかもそのうちわかるだろうから、それまではこれまでどおり。たぶん、移動になってもこれまでどおりだと思う。

 

・8月某日

夏が帰ってきた。そんな暑さだった。人づての話には信憑性がわからない内容がたくさんあって、正直相変わらず曖昧なまま。夕方、サイトの修正作業を行うもトラブルに見舞われる。レスポンシブ対応の構造に悩む。

 

・8月某日

朝から猛暑。出がけに腹痛。電車降りて下痢。昨夕のコーディングを、頭の中でもう一度シミュレーション。今日はリスティング最後のレポート。いくつかの部署が9月から移動になると聞いた。本社はかなり人が少なくなるなーと思った。 

 

・8月某日

雨風が強い朝。ただ、自宅最寄り駅に到着する頃には雨が小降りになった。これは幸い。寝起き、誰だかわからない人の葬式に参列する夢を見た。夢の中で知らない人が大粒の涙を流していた。葬式の夢は吉兆と言うようだけど、あまり気持ちのいいものではないかもしれない…心労かな?と思った。本社を9月のできるだけ早い段階で退くとの話を、夕方また耳にした。広告宣伝がまるごと一緒に動くのか、バラけるのかは不明。いずれにせよ、来週以降何かしらの動きが見えて来るのだろうと思う。

 

・8月某日

本社での夏期休暇明け。正直しんどい。いくつかの修正をこなして、ぽかんと過ごす。いよいよ拠点への移動が濃厚に。幾度となく話しは上がるけど、まだちゃんとわからない。今日になって、また何人かの退職話を耳にした。

 

・8月某日

夜雨が降ったような雨上がりの朝。湿気がひどい。陽射しがないぶん、いくらか過ごしやすいと思う方がいいのかもしれない。首を寝違えた。右を向くと痛い。このところずっと喉仏周りに違和感がある。拠点移動、確定。今日は広告宣伝のみんなで実際に拠点まで出向いて、現地確認もした。できるだけ早く本社を出ろと買収先からのお達しだけど、処遇もわからなきゃ行って何するのかもなし。拠点の都合も考えないで移動はできないし、何もかも雑。今週から来週にかけて動くのだろうけど、まあ成るように成るか。たぶん答えは急に出ることがあっても、誰も偉い人に聞かないでいるからわからないままなんだろう。自分が直接聞きに行くのでもいいけど、たぶん教えてもらえないんだろうなあと思う。本当雑。

 

・8月某日

予報では猛暑。3時20分に必ず目を覚ますこの頃。朝からうんざりする暑さ。今日も取り立ててやるとこはない。拠点ではどんなことを手伝えるのだろう。無茶ぶりが多いのでそこが不安なところ。勤務地がさらに遠くなることも懸念。最悪、進退を検討しないといけなくなるかもしれない。で、ウェブの修正をこなして、なんとなく午後をまどろみながら過ごしていると、また夕方動く。今日は各拠点の偉い人たちがほぼ全員本社に来ていた。どうやら拠点職員は買収先へ転籍となるようだ。これが自分たちにも当てはまるかわからないけど、マル秘リストみたいなものを見せてもらった。これを見る限りでは処遇は変わらないように見えた。休日が減るくらいだろうか。まあ、これまで暦どおり休めたことがこの10年以上なかったので、見方を変えるとこのとおり休めるなら悪くないと思う社畜丸出しの受け取り方をしている自分に笑いそうだった。いずれにせよ投げやりになるのではなく、潔くいられればいい。

 

・8月某日

もう夏のこの暑さ、だいぶお腹いっぱい。出社するなり、朝礼に参加するよう上長から聞いた。朝礼では全社員が買収先へ転籍と言う説明があった。処遇は変わらないとの一言説明。詳細もなく、これで同意しろとかあり得ない。昼過ぎに朝礼の内詳細容を直接確認する。説明会的なものはないとのこと。あらかじめ資料を見ていた自分には、どこがどう変わるのか多少は分かるものの、このことを知らない人が多数いるのにどうするのだろうか?あまりにも雑。

 

・9月某日

急に涼しげな朝。雨。月初の人の多さと電車遅延。いつもの変わらない風景。今日から多くの人が移動となる。会社に着くと閑散としているのだろうか。いない人も居たけど、割と通常だった。午後、拠点へ行く。特に何かをする訳でもなく。ただ、引っ越しの目安が決まった。9月中旬辺りが濃厚とか。これに伴ってちょくちょく荷物運びや力仕事をすることになりそうだ。今会社へ行くのに履いてきているスラックスが痩せてどれも緩くなっている。ここのところ毎回帰りが遅くなる傾向にあるし、帰れるタイミングで帰らないと。

 

・9月某日

ここ数日首の付け根が痛くて、寝違えだと思っていたけど痛みの種類が確実にヘルニアのそれに似ていたこともあって、朝玄関先で動けなくなった。大事をとって今日は会社を休んだ。病院へ行く。ヘルニア再発との診断。湿布と痛み止めの薬でしばらく様子見。診察待ちの時に仲の良い会社の友だちから転籍にまつわるメールの写メがLINEで送られてきた。微妙な内容。有給は日数引き継げるけど、次年度更新で10日しか増えないとか。欠勤または振替休日前提でこれからは対応しないといけないとか。勤続年数もリセットされることから、これまでの努力はパーとか。労働契約書なり就業規定なりを確認させてもらいたいが、言っても玉砕されるんだろうな…と思う自分もいる。まあ、気負わずにやれるだけやろう。夕方から薬の副作用のせいか急激な眠気に襲われて、寝て起きて、台風の暴風で家が揺れているのに気づいて驚いた。今日会社行かなくて良かった。

 

・9月某日

台風明けて蒸し暑さ戻る。仕事は平凡。体調は薬がよく効いているおかげか、多少の不便で過ごせた。資料の整理をする。転籍にまつわる説明を人事から少しだけ受けた。転籍同意書、退職届、転籍届、交通費、保険証のこと。交通費申請だけ今日提出した。いろいろまだまだ雑でうんざりするけど、これも買収先の本社職員を辞めさせたいやり方だろうなと、ぼんやり思った。

 

・9月某日

首まわりの痛みがずいぶん楽になっている。いろいろ不便なのは仕方ないけど、早く良くなって欲しいと思う。さて、今日また買収先から動きがあった。簡単に言うとこうだ。広告宣伝でありつつ、拠点のヘルプ業務をこなしつつ、営業も営業事務もやれと。わかりやすく言うと、お前らは生産性のない部署だとか。いただいている給料が拠点職員のそれと変わらんのに楽をするなと。そんなことを言われてパワハラかと?すごい圧力かけて来るなと思った。無茶ぶりかまして辞めさせたいって考えが見え見え過ぎて笑う。こんなのどう考えたって勤務時間内に仕事終わらせられる業務量じゃない。相変わらず買収先から打ち合わせすると言って声をかけられて5時間以上放置とか。これもう何度目だ。買収先によるまったく未経験で畑違いな職種の仕事や、無茶な勤務地への移動もあり得ると感じた。そんな嫌な午後だった。明日は平和であってほしい。

 

・9月某日

雨、蒸し暑い。夏はいつまで続くんだろう。今日はやることなくて眠い目こすって過ごした、くらいの一日であってほしい。実際午後はほとんど気を失っていた。そのくらい病気なんじゃないかってくらい眠かった。昨日すっぽかされた打ち合わせがあるのかどうか。結果、就業時間終了と同時に買収先が上長を呼び出し。中途半端な打ち合わせのため、続きは週明けになる。宿題が出た。この会社へ入社する際に提出した職務経歴書をシンプルにしたものを用意すること。つまりこうだ。業務分掌、いわゆる各人何ができるかを買収先に伝える必要があるようだ。営業にさせるとか何とか、ここに来てまた二転三転しているからすごいなと思う。

 

・9月某日

少しだけ涼しげな日。雨が降ったり止んだりの朝。昨夜は眠れたのか眠れなかったのかよくわからない睡眠をとった。初恋の人が夢にいた。さて、会社では朝から重い話しがあった。簡単に言うと先週に聞いた話の詳細だった。まるで広告宣伝をやらせる気はない模様。判断は営業か拠点長をやれとのことらしい。無論、その他にできることがあればそれでも良いみたいだけど、確実に追い込んできているのと、給与をがっつり減らすと言われているようなもの。また、拠点へ移動するものの、広告宣伝は一人居ればいいとのこと。上長を残して自分を含めた3人はバラバラになるってことだろう。それ以外にも、猶予は拠点移動から2ヶ月以内にまた次の移動を命じられるとのこと。いよいよって時にまたこの二転三転。さすがにしんどかった。そんな自分たちに何ができるのかリストを作るよう命じられた。思いつくのは数点ほど。親父から久しぶりに電話がきた。老齢の親父はまだ働いているみたいだ。相談程度にいい仕事なんかない?って聞いたら、お前の好きなことしろってあっさり言われた。急ぎなら築地の魚河岸を紹介できると言われた。まあ親父らしい。特別期待はしてなかったけど。まあ、様子見しながら真剣に将来を再構築しないといけない時が来たかもしれない。

 

・9月某日

いつもより過ごしやすい朝。気温がずいぶん落ちた。やはり二転三転。今日になって、予定されていた拠点引越しの話しがあやふやになった。呆れる。移動に伴う工事をやるのかやらないのか?今かそれか?という話し。もう笑う。

 

・9月某日

今日もずいぶん気温が低い。心なしか肌寒い。このくらいがちょうどいいかもしれない。つかの間の晴れ間がある朝、ストレスは変わらず酷い。一ヶ月以上続く口内炎や睡眠の質低下、帯状疱疹、頚椎ヘルニアがそれを表しているように思う。気にしても仕方のないことなのだろうけど、不安定さは時に身体へ警告を出すってことだろうと思う。拠点へ引越しの話し、今月末予定?のようなことを耳にした。話半分に聞いておいた。

昼までは大丈夫なのに、午後2時過ぎ頃から失速するような眠気に襲われる。何してもダメ。この調子だといつか倒れるんじゃないかと思う。

 

・9月某日

秋なのか?急に気温が落ちている。今朝はやや肌寒い。歩けば気にならない。風は心地よい。特別やることもないのに会社へ行く。たぶん、やることが多すぎてもげんなりするだろうけど、なさすぎてもそれはそれでしんどい。ちょうどいいのはどこのあるのだろうか。今日もやることがないのは同じなんだろう。朝から重い話しがあった。これまで一番知りたかった転籍にあたっての処遇、給与のことだ。正直、こんなに減らされると思っていなかったので人事から呼び出されて聞いた時はかなり驚いた。と言うショックを受けた。額面にしておよそ30%以上カットだろうか、がっつり落とされている。しかも、これは口頭説明のみ。ただ、録音はさせてもらった。 また、処遇に関して交渉の余地はないこと。これに納得できない場合は、今月末で退職勧奨とする旨を聞いた。想定はしていたけど、想定をはるかに超えていた。生活できるかなあ…正直厳しい。時を同じくして、かつて感じたシクシクする痛みがあった。尿道炎っぽい。頻尿だし、ずっとシクシクしているし。最悪。

  

・9月某日

気の重い小雨交じりの朝。電車に遅れが生じてさらに気が重い。現実に給与が下がるまで、猶予はちょうど一ヶ月。この短いスパンで次が決まると思えないけど、気持ち焦らずしっかり探して行きたい。今日は割とのんびりムード。夕方、空気が変わる。印刷物の取捨選択、そして修正の山。休み明けからは久しぶりに忙しくなりそうだ。これで処遇が変わらないのなら気持ちが落ち込むことはなかった。たぶん、どう転んでも もう前向きにはなれない。仕事を円滑にするとかうまくやることはできるけど、それとこれは別の問題。生活の質を下げること、それに慣れること。そして環境を変えること。いずれも対処できるだろうけど、今をどうにかしないといけないこと。

 

・9月某日

気の重さ変わらず。久しぶりの連休は充実したとは言い難い感じだった。酒が身体を拒否しているのだろうか、あまり飲めなくなってきたとこの頃思う。朝から胃の調子が良くない。ストレスなのか疲れなのか、そのすべてなのか。どこに原因があるのか、どこにも原因があるのかもうわからない。いずれにせよ、日々は続く。さて、午前中早く拠点へ行けと買収先より指示があった。それは構わないけど行って何するのよ?って感じ。減給の第二波、もしくは通えないような遠距離異動があれば、迷うことなく即日辞めようと思った。次が決まるか決まらないかに関わらず。もうこれ以上はないわ。また、今日も多くの人から退職を知らされた。これはこれでしんどい。帰宅。娘たちと話す。これからの会社のことを説明(シフト制で生活にすれ違いが出る、夜勤、休みが減るなど)する。二女からパパと過ごす時間がなくなるのは嫌だと泣かれた…堪えた…自分は家族に泣かれてまで続けたい仕事なのだろうか。

 

・9月某日

かねてより退職を悩んでいた仲の良い友だちから退職を決めたと朝一でLINEが送られてきた。そうだよな、彼は悩んでいたもの。自分も悩むもの。気持ちは一刻も早く逃げ出したいけど、次に働けるところを決めないと動くに動けないのも本音。次の減給があれば即辞めるつもりだけど、本音で言えばきつい。堂々巡りの思考パターンになる。午前中、また上長に買収先から内線の電話が鳴る。夕方近くに打ち合わせがあるとのこと。この時点では嫌な予感で済んだ。昼下がり、お待ちかねの打ち合わせ。やはりここでも自分たちは蚊帳の外。上長から報告を受けて心が折れた。完全にジョブチェンジの道しか示して来ない。給料下げられて休みも減らされて広告宣伝としての仕事もなくなる。昨夜二女に泣かれた記憶がよみがえる。家族を泣かせてまで続けたいと思えない気持ちが強くなった。この時点で退職の意思がだいぶ固まった。帰宅して家族に自分の意思を伝えた。不安が多いけど、ここから自分の力でまた一から道を切り拓くしかない。そろそろこの日記も終焉を迎えることになりそうだ。

 

・9月某日

秋の気温なのか、心地よさもあるけど肌寒くもある。退職の決意を上長と話すことになった。一番の退職理由は家族泣かせてまで続けたくないこと、そして片道2時間30分という勤務地が遠くなったことへの懸念、減給、処遇の改悪(休日体制がシフト制移行に伴い休日が減る)、広告宣伝としての仕事がなくなること。ありのまま上長に伝えた。目頭が熱くなる。もうこらえきれなかった。長年の上司であり、友であり、家族のような時間を過ごしたからなのだろうか。時に憎み、時に慈しみ。溢れる涙は嘘偽りのないものだった。やれることはやった。言うことも言った。そのうえで、もう一度よく考えて明日あらためて答えを出して欲しいとの回答を得た。午後は怒涛のパンフレット出力をしていた。さすがに足腰が辛い。今日は風呂によく温まり、よく眠りにつきたい。

 

・9月某日

ようやく秋めいた。肌寒い。これでまた明日には30℃の暑さが帰ってくるとか…そろそろ落ち着いた季節になってほしいもの。今日は朝一に上長からLINEが来た。あまり筆まめな方ではないのに、めずらしく長文だった。今でも辞めるの止めますと言えるタイミングだけど、もうそれはやめようと思う。片道2時間の旅路に終止符を打つ。無論、働きながら次を探してちゃんと決めてからでも遅くないと思う。でも、二女の思いをないがしろにはできない。不安と葛藤の末、出した結論。投げやりではない、これは潔さだ。午後、またひっくり返る。会社都合で退職処理できないとか。退職勧奨しているのに会社都合による退職にならないとかアホかと。労働契約書の提示もまだで、会社都合退職にすると言っていたものが全部パー。退職手続きを管轄する部署の部長に説明を求める。録音許可もとった。結果、異議申し立てで対応するよう言われた。とは言え納得できない。退職届を書けと言われた。会社都合で退職しなければいけないのに?無論、会社にとって都合のいい文面で提出するつもりはない。提出するにしても正しい文面で提出するつもりだ。

 

・9月某日

過ごしやすい気温なのに、交通機関はエアコンが寒い。念のためと思ってジャケットを久しぶりに着てきたけど、これは正解。なかなか電話の繋がらなかった労働弁護団へ電話をした。今の状況だけで判断すると、十分会社都合退職になるとの判断だった。また、労基にも電話で確認したところ、労基が離職票の会社都合を覆すことはないと回答を得た。そして、退職届は会社へ提出するなとの内容だった。これをもって退職手続きを管轄する部署の部長へ再度相談した。なるほど合点がいった。問題は誰が退職勧奨に伴う会社都合で退職と言い出したのかと。そう、買収先といい仲になっている他部署の部長だった。これは口頭での言質もあり、偉い人へ宛てられたメールにもその証拠はある。言質は基本的に録音で全て抑えてある。要はどこで損得にするかと言うことだ。つまり、会社と争う気があるならこのまま会社に居続けることで会社都合退職になるだろうけど、時間もかかるうえに徒労や心労が重なる。それならば、異議申し立てをしてこれまでの録音をハロワに提出する方が健全だということ。労働契約通知書をもらえれば一番楽ではあったのだけど、今日話した感じだと退職の意思を示した自分の分はいただけないとのこと。話途中で続きは明日との回答を得たが、もう明日には退職届を提出しようと思う。ほとほと疲れた。そんな一日だった。

 

・9月某日

秋の訪れに似た寒さと言っていい。上着がないと肌寒い朝を迎えた。頭皮のフケが酷くて悩む。眠りは浅く、夢をみていた。会社に着いたら退職届を修正して、いつでも提出できるように準備しておこうと思う。午後いつもお世話になっている代理店さんが来社してくれた。夕方まで特にこれといった動きはなかった。買収先といい仲になっている他部署の部長とは書面のあるなしについて、最後の確認をした。エビデンスというところで、仮に録音したデータの提出とドキュメントをハロワに提出しても、問題は自分の退職後に誰が対応するのか?というところである。たぶん自分だけじゃない、たくさんの退職者が同じような異議申し立てをすることになったらどうするのか?という話しをした。そのうえで何をどう判断するのかは、もう会社の人に任せる。そもそも会社と争うつもりはなく、そもそも辞めたくて会社を辞めるのではないからだ。ほとほと疲れた。提出した退職届を見て退職手続きを管轄する部長からあの退職届は…と言われたけど、撤回するつもりはないからいい。それに、何を書いてもいいという話しも聞いていたから心情を書いたまで。どうあれ異議申し立て路線は変わらないのだから。

 

・9月某日

スイッチを切り替えたように寒い。秋なのかどうかわからない、秋にしては冷える、そんな寒さ。残すところ今日を入れてあと二日出社して退職を迎える。ようやくここまで来た。変わらない修正作業、引き継ぎ書類もあと少しで終わりになる。いろいろあったな…と、いろいろデジャヴなことにも、今日多く気づいた。部署の引っ越しに伴う荷造りを手伝ってのんびり過ごした。これも明日で終わり。久しぶりに心穏やかに過ごせたことが嬉しかった。この日は知人と秋葉原で食事をした。いつもながら多くのことを学ばせてもらった。何よりも学んだのは、どれだけ尽くしてきた会社でも会社を信用し過ぎてはならないということ。会社は従業員を駒としか見ていないのだと痛感した今なら、理解がよくできる。これから先の不安はあるものの、心地よい時間を過ごすのは何より気持ちが安らいだ。

 

・9月某日

朝焼けが綺麗だった。やや肌寒いけど、外に出てみるとそのあたたかさが優しくも感じた。いつもと同じ朝、いつもと同じ通勤。違うのは10年以上続けてきたこの通勤が終わりになること。これまでお世話になった方たちに、会える人に直接、残念ながら会うことができない人には電話やメールで挨拶をしようと思う。引っ越しの手伝いをして、特にやることはないけど、引き継ぎ書類にあるギミックを施した。広告宣伝のみんなへメッセージを残す。これが自分の最後のミッション。まとめあげた帰り際、これまで挨拶ができなかった人たちへのお礼周りをした。上長と最期の挨拶をして、この日まで共に歩み続けてきたこの日退職となる仲間たちと何年ぶりかに泥酔レベルの酒を酌み交わした。まだ退職の実感はまるでないけど、これがこの会社の最後になる。この日記もこれが最後になるだろう。

 

...本当、実際はもっといろいろありました。

あまりにも縦に長くなってしまうため、月ごとに分けようか悩みましたが、改行削除と文字編集でいくらか短くしました。まだ長いけど。

 

そして、実はエピローグも書いたのだけどそこは削除した。

理由は簡単、それが今だから。